ハンセン病と偏見

ハンセン病は別名「ライ病」とも呼ばれ、1873年、ノルウェーのマルウェルハンセンによって発見された病気である。
感染力が弱く、日常生活において感染する事はほぼない。
しかし、この病気の発症原因は「らい菌」というウイルスによっておこる事から、伝染病である為、身近で感染者が出るとどうしても偏見的な見られ方をしてしまうのである。
また、過去には日本政府がとった「らい予防法」という法律も偏見の眼差しを大いに煽る事になる。
現在ではこの法律は廃止されているが、当時はハンセン病患者は即座に専用施設に隔離され、強制労働を強いられていた。
しかも、隔離は一時的なものではなく、終身隔離でという過酷なものであった。
このような事例は世界的にも極めて珍しく、人道的に大きく逸脱する悪法中の悪法であった。
当時の日本政府のハンセン病に対する取り組みは常軌を逸したものであり、許されてはならないものである。
現在、国が抱えているハンセン病訴訟の背景には、このような壮絶な過去があったからだ。

●症状
ハンセン病は命まで奪うような病気ではないが、顔や手などが変形する事から、当初は非常に恐れられていた病気である。
その他の症状としては、末梢神経の麻痺や皮膚のただれなどが見られる。

●治療とその後の生活
昔は治療法が確立されていなかったが、現在では早期発見・早期治療によって完治できる病気である。
しかし、現在の患者は治療法がない時代の患者が多く、年齢にして70才代が主流だ。
その為、現在でも専用の療養所で生活する患者がほとんどである。
病気自体は治癒している患者がほとんどだが、戦時中に受けた過酷な労働などのえいきょうにより、今もって後遺症に苦しんでいる人々も多く存在するのだ。
いまだ生まれ故郷に帰る事すら許されず、亡くなった後も遺骨すら家族のもとに届けられない現状が続いている。
そういう意味では、まだまだこの問題は解決しておらず、問題山積となっている。
ハンセン病は現在では、感染源はほとんど存在しない。
顔や手足の変形は、単なる後遺症に過ぎないのだが、まだまだこの病気を完全に理解している人は残念ながら多いとは言えないのが現状だ。
一日も早いこの病気に対する理解と、政府による対応策が望まれるところである。