ペスト菌の驚異

ペスト菌が発見されたのは、1894年にフランスの医師・アレクサンドル・イェルサンによって発見された。
歴史的には165年~180年にローマ帝国での小規模な流行を伴った疫病が、人類史上最初のペストとして有力視されたいるが、実際にペスト菌が発見されたわけではないので、確実なものとはいえない。
やはりペスト菌が発見された1894年が、人類最初のペストとして認識されている。

●圧倒的な致死率
ペスト菌は人類史上、最も致死率の高い伝染病として、人々を恐怖に陥れた。
ペストには「病型」があり、それぞれ特徴と致死率に違いがあり、型によっては100%致死率という絶望的なものまで存在する。
例えば、リンパ腺が侵される「腺ペスト」は、リンパ節がこぶし大にまで肥大し、50%~70%の確率で死に至る。
また、ペストで最も恐れられているものが、肺ペストである。
発症率は極めて低いものだが、感染者の咳やくしゃみなどから、飛沫感染する上、感染すればほぼ100%死亡する恐ろしい病気だ。
また、皮膚のいたるところで出血を起こし、黒いアザだらけになって死に至る「ペスト敗血症」もある。

●日本におけるペスト
日本においては1899年、台湾から帰国した男性が発症し、その後死亡した。
それ以降、45人の感染者が発症し、そのうち40人が死亡する事態となった。
最大のピークは1907年、650人近くの感染者を出した大流行を境に、その後1930年に二人の死亡者を出したのを最後に終息した。

●ペストの歴史
ペストの歴史を語る上では、14世紀にヨーロッパで大発生した最悪のペスト感染が筆頭にあげられる。
この大感染劇がはじまる前、中国で流行したペストがヨーロッパに伝わったとされている。
この時には死者3千万人とも言われ、甚大な被害を齎したのである。
ペスト菌が人類史上最悪の伝染病と語られる背景には、この時代の大流行が甚大な被害を出した事にある。
ペストは元々ネズミが感染し、ネズミから人へと感染していった。
歴史的な文献によれば、1347年10月、東ローマ帝国の首都であったコンスタンティノープルより12隻の船が出航した。
その船に積まれた大量の毛皮にノミが付着していて、そのノミが感染していたのではないかとの記録が残っている。
ノミからクマネズミに感染し、クマネズミから人をはじめ様々な動物に感染が拡大したと考えられている。

●現代におけるペスト菌
現代社会において、ペストはほとんど見られなくなったが、全くなくなったわけではない。
しかしながら、今では治療法も確立されており、早期発見、早期治療ならほぼ確実に治る病気である。
治療法は抗菌薬の服用によるもので、発症後ただちに適切な処置をすれば怖い病気ではない。
ただし、治療が遅れ、敗血症になると危険だ。
敗血症は前述にように重症化すれば死に至る。
これに関しては病気全般に言える事だが、早期発見・早期治療が最も重要だ。