エボラ出血熱の猛威

世界中に蔓延するウイルスの猛威は後を絶たない。
特に最近ではアフリカを中心に広がりを見せるエボラ出血熱の猛威が凄まじい。

●最初の発症
エボラ出血熱は1976年6月、アフリカのスーダンで男性が発症し、親類や医療関係者を中心に次々と感染が拡大した。
当時はこの病気に対する知識がなく、ただの風邪だと思い、医療関係者は無防備で治療にあたった。
その病気の驚異の感染力を知らず、防護服もつけずに治療にあたってしまったのだ。
やがて治療にあたった医療関係者と接触のあった者にも次から次へと感染し、瞬く間に世界を震撼させる恐怖の伝染病として知れ渡った。

●致死率
エビラ出血熱の怖いところは、なんといってもその致死率にある。
その致死率は50%をゆうに超え、2003年のコンゴで発生した流行では、なんと90%という驚異の致死率であった。
10人中9人が死亡するというとんでもない事態となった。

●症状
エボラ出血熱の初期症状はインフルエンザと似ており、はじめのうちは誰もがただの風邪と思ってしまうほど酷似している。
症状が悪化すると、吐血・歯肉や消化管からの出血を伴い、これが直接的な死因となる事が多い。
ウイルスは肝臓で増殖する為、肝臓が肥大し、右脇の下が痛む場合がある。

●アメリカや日本での感染疑惑騒動
アメリカで初の国内感染者が出たというニュースは、瞬く間に世界をかけめぐった。
2014年10月の事である。
くしくも経済では、ヨーロッパのデフレ懸念が強まり、世界的な株安が進行する最中での出来事だ。
ニューヨークダウは直近の高値から1300ドルもの下げを記録するなど、世界経済へ与えた打撃は大きなものとなった。
ほとんどの銘柄が軒並み下落する中、エボラ出血熱関連銘柄が物色された。
日本エアーテックやアゼアスなどが大きく買われ、暴騰直前から短期間で実に3倍まで株価は上昇した。

日本でも羽田空港でリベリア帰りの男性が高熱を発症し、一時騒然となる騒ぎがあった。
この男性はジャーナリストで、約2ヶ月ほどリベリアに滞在し、日本に帰国した。

●治療薬
残念ながら、現在確実な治療薬はまだ開発されていないのが現状だ。
そんな中、富士フイルム子会社の富士化学工業が開発した「アビガン」が注目を集めている。
エボラ出血熱の治療薬開発が遅れている要因として、今まではアフリカに限定されていた為、日本やアメリカなどの先進国ではあまり関心が示されなかった背景がある。
しかし、ここにきて世界的な広がりが懸念され、早急な対応が迫られるようになった。
そんな中、アビガンは異例とも言えるスピード承認で、今後の動向が注目されるところだ。

●エピソード
エボラ出血熱は株価に大きな影響を与え、投資家の間では大迷惑な話だとして揶揄された。
一方、関連銘柄は暴騰し、掲示板などでは表面上心配するも、誰もが心のどこかで陽性を願う非人道的な様子が窺えた。
このニュースは東京市場が終わった夕方に流れ、夜にはテレビ局各社が一斉に報じた。
これを受け、夜間取引(PTS)では暴騰し、検査結果が朝方出るので陰性だった場合に暴落するのでは?との皮肉な憶測を呼んだ。
結果はテレビで大きく報じられた事が材料となり、検査結果は陰性だったが翌日の関連銘柄は大きく上昇した。

人の不幸が株価に影響を与えるとは、なんともせちがない世の中だ。
心から陰性を願った人は、関連以外の銘柄を持ち越した人たちが、自分の損失だけを気にする人間の醜い心の内を垣間見る事となった事は、残念と言わざるを得ない。